2022年09月30日
2022年 第 38 週(2022/9/19~2022/9/25)
【今週の注目疾患】
■結核
9 月 24 日から 30 日は結核予防週間である。
結核の早期発見は、本人の重症化を防ぐだけでなく、大切な家族や職場等への感染の拡大を防ぐためにも重要となる。
県では職場や市町村で行われる健康診断を受け、1 年に 1 回は胸部エックス線検査を受けることや 2 週間以上、咳や痰が続く時には医療機関を受診することなどを呼び掛けている 1)。
2022 年第 1 週から第 38 週までに県内医療機関から結核の報告が 550 例あった。
県内における年間の累計報告数は 2016 年以降減少傾向にあり、2021 年は 852 例と過去 10 年間で最少であった。
本年報告された 550 例のうち、性別では男性 332 例(60%)、女性 218 例(40%)と男性が多かった。
年代別では 70 代 124 例(23%)、80 代 117 例(21%)と高齢者が多く、60 歳以上の割合は 62%であった。
小児結核(0~14 歳)は 10 例(2%)であった。病型別では肺結核 234 例(43%)、無症状病原体保有者 185 例(34%)、その他の結核 115例(21%)、肺結核及びその他の結核 16例(3%)であった。
その他の結核で多かったのは、結核性胸膜炎 53 例(10%)、結核性リンパ節炎 26 例(5%)、粟粒結核 10 例(2%)、腸結核 4 例(1%)※であった(※複数症状のあるものはそれぞれに計上している)。
2021 年の日本の結核罹患率(人口 10 万対)は 9.2 であり、前年と比べ 0.9 減少し、結核低まん延国となった。
日本の結核罹患率は、米国等他の先進国の水準に年々近づき、近隣アジア諸国に比べても低い水準にある。
但し、2021 年の結核罹患率の減少については、新型コロナウイルス感染症の影響も考えられるため、注意が必要である。
罹患率が減少する一方で、2021 年は受診の遅れ・発見の遅れが前年比で増加した。
2021 年の新登録肺結核患者のうち有症状者の中で、受診が遅れた(症状発現から受診までの期間が 2 か月以上)患者の割合は、前年から 1.7ポイント増加して 20.8%であった。
また、発見が遅れた(症状発現から結核の診断までの期間が 3 か月以上)患者の割合は、前年から 2.3 ポイント増加して 22.0%であった。
これは 2002 年以降で最も高い割合となっている 2)。
結核の感染経路は空気感染である。
菌を出している肺結核患者の咳やくしゃみなどの「しぶき」と一緒に結核菌が空気中に飛び散り、水分を失って数μmの軽い飛沫核となり、それを吸い込むことにより感染する。
感染をしても全ての人が発病をするわけではなく、健康であれば、免疫の働きによって抑え込むことができる。
しかし、病気などで免疫力が落ちると、抑え込まれていた結核菌が再活動を始め、発病をする可能性がある 3)。
初期症状は風邪に似た症状である。
痰のからむ咳・微熱・身体のだるさが 2 週間以上続く場合には、早期受診が勧奨される。
咳や痰、発熱などの症状が出ないこともあるので、体重減少・食欲がない・寝汗などがある場合にも早期受診を検討されたい 3)。
結核は肺結核が代表的であるが、それ以外にも頸部リンパ節結核、脊椎カリエス、腸結核、腎結核など全身の様々なところに病巣を形成する(肺外結核)。
菌が血流により全身に行きわたり(粟粒結核)、髄膜に到達する結核性髄膜炎などもある。
現在では、粟粒結核は早期発見により治癒の可能性が高まっているが、髄膜炎は 3 分の 1 が死亡し、脳に重い後遺症を残すことがある 4)。
結核の治療は無症状病原体保有者については、潜在性結核感染症として、数か月間薬を服用することで発病を予防する。
患者についても、一定期間毎日複数の薬を服用して治療する。
不適切な断薬は治療に失敗するばかりでなく、結核菌の薬剤耐性化を招く。
確実な治療のため、入院中も退院後も医療従事者が服薬を見守る仕組みを DOTS といい、医療機関と保健所が協力して行う3)。
また、小児の結核性髄膜炎や粟粒結核の予防には BCG 接種が極めて有効であり、1 回の接種で 10~15 年程度効果が持続すると考えられている。
標準的な接種スケジュールは生後 5~8 か月であり、市町村からの案内に従い接種する 5)。
■参考
1)千葉県:結核予防週間
>>詳細はこちら
2)厚生労働省:2021 年結核登録者情報調査年報集計結果について
>>詳細はこちら
3)公益財団法人結核予防会結核研究所:結核の常識 2021
>>詳細はこちら
4)公益財団法人結核予防会結核研究所:結核の基礎知識
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5)厚生労働省:結核と BCG ワクチンに関するQ&A
>>詳細はこちら
【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年9月28日更新)