2022年10月21日
2022年 第 41 週(2022/10/10~2022/10/16)
【今週の注目疾患】
■日本紅斑熱・つつが虫病
2022 年第 41 週に県内医療機関より日本紅斑熱の報告が 1 例あり、2022 年の累計報告数は 14例となった。
性別では女性 8 例(57%)、男性 6 例(43%)であった。
年齢別では 60 代が 6 例(43%)で最も多く、次いで 80 代が 5 例(36%)であり、60 代以上が全体の 9 割以上を占めていた。
日本紅斑熱は 2020 年から増加傾向を示しており、昨年は過去 10 年間で最多報告数となった。
同じくダニ媒介感染症であるつつが虫病も同様の傾向を示しており、2021 年は過去 10 年間で最多報告数となった。
例年、日本紅斑熱は 11 月頃まで報告がみられ、つつが虫病は 11 月頃から報告数が増加する傾向にある。
両疾患ともに予防方法はダニに刺咬されないことであり、農作業や狩猟、レジャー等で野山に立ち入る際は引き続き注意が必要である。
リケッチア症で報告数の多い、日本紅斑熱とつつが虫病は臨床症状が似ており、「①発熱、②皮疹、③刺し口」のいわゆる3徴が共通している。
しかし、患者が必ずしも受診時に発熱を認めるとは限らず、患者が皮疹や刺し口の存在を自覚したり、自ら医師に伝える頻度は低いため、注意を要する 1)。
日本紅斑熱とつつが虫病はともに抗菌薬で治療可能な疾患であるが、死に至る場合もあるため、適切な診断・治療が重要である。
臨床的には日本紅斑熱とつつが虫病の鑑別は難しく、届出には実験室診断が必要となる 2)。
日本紅斑熱は紅斑熱群リケッチアの一種 Rickettsia japonica を起因病原体とし、病原体を持つマダニに刺咬されることにより感染する。
全てのマダニがリケッチアをもつわけではなく、リケッチアを持つマダニに刺咬された時だけ感染する。
潜伏期間は 2~8 日で、つつが虫病と比べてやや短い。
つつが虫病との臨床的な鑑別は困難であるが、発疹は体幹部より四肢末端部に比較的強く出現すること、つつが虫病に比べ刺し口の中心痂皮部分が小さいなどの特徴があり、刺し口が確認される頻度はやや低い 2)。
つつが虫病の病原体は Orientia tsutsugamushi と呼ばれるリケッチアで、細胞外では増殖できない偏性細胞内寄生細菌である。
ダニ類の一種であるツツガムシが媒介する。
わが国で本菌を媒介するツツガムシは 3 種類が主であり、それぞれのツツガムシの 0.1~3%が菌をもつ有毒ツツガムシである。
ヒトはこの有毒ツツガムシに吸着されると菌に感染する 2)。
日本紅斑熱、つつが虫病を予防するワクチンはないため、ダニの刺咬を防ぐことが極めて重要となる。
農作業や山林作業、レジャーなどで山林や草むらなどダニの生息場所に立ち入る場合には、①半ズボンやサンダル履きなどの軽装は避け、長袖長ズボンなど肌の露出が少ない服装にする、②忌避剤(防虫スプレー)を使用する、③帰宅をしたらすぐに着替え、洗濯する、④帰宅後はすぐに入浴し、体にダニが付いていないか確認する、などの対策をとる。
また、刺咬された場合には、無理に引き抜くとダニの一部が皮膚に残ってしまうことがあるので、医療機関を受診して除去してもらうことが推奨される 2,3)。
■参考
1) 国立感染症研究所:つつが虫病の臨床的特徴と、類似疾患との比較(IASR Vol. 43)
>>詳細はこちら
2) 国立感染症研究所:IDWR 注目すべき感染症 ダニ媒介感染症 つつが虫病・日本紅斑熱
>>詳細はこちら
3)千葉県:ダニ媒介感染症について
>>詳細はこちら
【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年10月19日更新)