2022年10月28日

2022年 第 42 週(2022/10/17~2022/10/23)

【今週の注目疾患】
■レジオネラ症
 2022年第42週に県内医療機関から6例のレジオネラ症が報告された。
患者は全て男性であり、病型は肺炎型であった。
年代は 40 代が 4 例と 60 代が 2 例であった。
推定される感染経路については水系感染が 2 例、不明が 4 例であった。
現時点においてはそれぞれ散発的な事例と思われ、同一の場所からの症例集積は認められていない。

 本年の累計報告数は 70 例となり、病型別では肺炎型が 65 例(93%)、ポンティアック熱型が 3例(4%)、無症状病原体保有者が 2 例(3%)であった。
性別では男性が 57 例(81%)、女性が13 例(19%)と男性が 8 割以上を占めていた。
年代別では、70 代が 22 例(31%)と最も多く、次いで 80 代が 14 例(20%)、60 代が 13 例(19%)であり、60 歳以上が 7 割以上を占めていた。
レジオネラ症は 1 年を通して発生がみられるが、夏から秋にかけて届出が多くなる傾向が認められていることから、引き続き当該感染症の発生動向を注視していく必要がある。

 推定される感染経路については、水系感染が 19 例(27%)、塵埃感染 5 例(7%)、その他 12例(17%)、不明 36 例(51%)であった(水系感染と塵埃感染の両方が挙げられていた 2 例については、それぞれに重複して計上している)。
水系感染では、温泉や大浴場などの入浴施設、換水頻度の少ない自宅の風呂、貯水タンクでの洗車などが具体的な感染原因として推定されていた。
塵埃感染では、芝刈り作業、家屋の解体、廃棄物処理などが具体的な感染原因として推定されていた。

 レジオネラ症は、レジオネラ属菌による細菌感染症であり、主な病型として重症の肺炎を引き起こすレジオネラ肺炎と、一過性で自然に改善するポンティアック熱がある。
レジオネラ属菌は、土壌や水環境に広く存在する菌である。
感染経路としては、エアロゾルを発生させる人工環境(噴水等の水景施設、空調設備の冷却塔、気泡発生入浴設備、加湿器等)や循環水を利用した風呂を感染源とするエアロゾル感染、温泉浴槽内や河川で溺れた際に汚染された水を吸引・誤嚥したことによる感染、汚染された土壌の粉塵を吸い込んだことによる塵埃感染などがある。
人から人へ感染することはないとされる 1,2)。

 レジオネラ肺炎の潜伏期間は 2~10 日である。
全身倦怠感、頭痛、食欲不振、筋肉痛などの症状に始まり、咳や 38℃以上の高熱、寒気、胸痛、呼吸困難がみられるようになる。
意識レベルの低下、幻覚、手足が震えるなどの中枢神経系の症状や下痢がみられるのも特徴である。
適切な治療がなされなかった場合には、急速に症状が進行し、死亡に至ることもある 2)。
 ポンティアック熱の潜伏期間は 1~2 日である。突然の発熱、悪寒、筋肉痛で始まるが、一過性で治癒する 1)。
 高齢者や新生児は肺炎を起こす危険性が通常より高いので注意が必要である 2)。

 レジオネラ症対策としては、超音波振動などの加湿器を使用する時には、毎日水を入れ替えて容器を洗浄することが重要である。
なお、レジオネラ属菌は 60℃では 5 分間で殺菌されるため、水を加熱して蒸気を発生させるタイプの加湿器は感染源となる可能性が低いとされている 2)。
 追い炊き機能付きの風呂や 24 時間風呂などの循環式浴槽を備え付けている場合には、浴槽内に汚れやぬめり(バイオフィルム)が生じないよう定期的に清掃を行うなど、取扱説明書に従って維持管理をする 2)。
エアロゾルを吸い込まないようにすることも重要である。
エアロゾルが発生する高圧洗浄作業や、粉塵が発生する作業、腐葉土を取り扱う園芸作業をする場合には防塵マスクを着用して感染を予防する 1)。

■参考
1)国立感染症研究所:レジオネラ症とは
>>詳細はこちら
2)厚生労働省:レジオネラ症
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年10月26日更新)