2019年08月02日

今週の注目疾患   令和元年・第 30 週(2019/7/22~2019/7/28)

【日本脳炎】
日本脳炎は蚊によって媒介されるウイルス感染症であり、感染しても発病するのは100~1000人に1人程度といわれ、大多数は無症状に終わるが、脳炎を発症すると20~40%は致命的となる。
また、生存者の45~70%に精神神経学的後遺症が残り、小児では特に重度の障害を残すことが多く、パーキンソン病様症状や痙攣、麻痺、精神発達遅滞や精神障害などが知られている。
日本脳炎の潜伏期間は6~16日であり、典型的な症例では、初期症状として発熱、頭痛、悪心、嘔吐、眩暈などが出現する。
これら症状に引き続いて急激に、項部硬直、光線過敏、種々の段階の意識障害とともに、神経系障害を示唆する症状、すなわち筋強直、脳神経症状、不随意運動、振戦、麻痺、病的反射などが現れる。
麻痺は上肢で起こることが多い。脊髄障害や球麻痺症状も報告されている。
痙攣は小児で多い。
これらの症状を示す患者のうち、およそ30%が脳炎を発症し、本症の定型的な病型は髄膜脳炎型であるが、脊髄炎症状が顕著な脊髄炎型の症例もある。
日本脳炎はアジアに広く分布しており、日本では主に水田で発生するコガタアカイエカが日本脳炎ウイルスを媒介している。
蚊が日本脳炎ウイルスに感染したブタを刺咬・吸血し、その後ヒトを吸血し媒介する。
日本では日本脳炎ワクチンの定期接種が開始され患者数は著しく減少したが、毎年実施しているブタ血清中の日本脳炎ウイルス抗体保有状況から、近年でも千葉県内で日本脳炎ウイルスの蔓延あるいは活動が推測され、感染の機会はなくなっておらず、県内では、2015年に1例の届出を認めている。
一般的に日本脳炎の感染リスクは、水田が多くウイルス増幅動物としてのブタが飼育されている地域で高く、都市部で低いと考えられるが、コガタアカイエカは活動範囲が広いため、都市部であっても感染するリスクはゼロとはいえない。
日本脳炎の特異的な治療法はなく、日本脳炎は症状が現れた時点で既にウイルスが脳内に達し脳細胞を破壊しているため治療が難しい。
そのため、日本脳炎は予防が最も大切であり、蚊の刺咬予防と定期接種において確実なワクチン接種が求められる。
現在、日本脳炎定期予防接種は、第1期(初回2回、追加1回)については生後6か月から90か月に至るまでの間にある者、第2期(1回)については9歳以上13歳未満の者が接種の対象となっている。
平成7年4月2日から平成19年4月1日までに生まれた者で積極的勧奨の差し控えなどにより接種機会を逃した者は、20歳になるまでの間、定期接種として日本脳炎ワクチンの接種が可能であり、また、平成19年4月2日~平成21年10月1日までに生まれた者に対しても、生後6か月から90か月未満のみならず9歳以上13歳未満の間にも、第1期(3回)の不足分を定期接種として接種可能である。
市区町村からの案内に沿って接種を受けていただくようお願いしたい。

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和元年7月31日更新)