2019年07月05日

今週の注目疾患   令和元年・第 26 週(2019/6/24~2019/6/30 )

【E 型肝炎】
 2019 年第 26 週に県内医療機関から 4 例の E 型肝炎の届出があった。
2019 年の第 26 週までの累計は 22 例となり、過去の同時期(第 26 週時点)と比較すると届出が多くなっている

2014 年以降に届け出られた 125 例について、性別は男性 90 例、女性 35 例と男性が多かった。
患者年齢について、男性は中央値 62 歳(範囲;30~92 歳)、女性は中央値 55 歳(範囲;25~94 歳)であり、成人の中高年の届出が多い。
E 型肝炎は E 型肝炎ウイルスによるウイルス性の急性肝炎であり、感染してから発症するまでの潜伏期間は 15~50 日(平均 6 週間)と長く、発症すると発熱、全身倦怠感、食欲不振、嘔吐、腹痛、褐色尿、黄疸や関節痛などの症状が現れることがあり、A 型肝炎に似た臨床症状を示す。
ただし、感染しても不顕性に終わることも多い。
感染性のある期間を明確に定めることは困難であるが、実験ではウイルスの便中への排泄が症状出現の 1 週間前から黄疸出現後 30 日まで認めたとの報告もある。
E 型肝炎は、妊婦において劇症肝炎の割合が高く、特に第 3 三半期に妊婦においては致命率が 20%に達することがある。
E 型肝炎ウイルスには G1 から G4 までの 4 つの遺伝子型があり、G1 と G2 による E 型肝炎は、開発途上国においてウイルスを含む糞便に汚染された飲用水等の摂取による水系感染を起こし、アウトブレイクの発生も報告されている。
G1 はアフリカとアジア、G2 はメキシコや西アフリカに分布している。
輸入感染症としてのリスクがあり、流行地への渡航の際は清潔な飲料水を確保し、衛生的でない水を飲用・食用に供することを避ける必要がある。

方、先進国では非加熱や加熱不十分の豚肉や鹿肉の喫食歴を持つ人において G3 による E 型肝炎の発生が散発的に報告されており、日本、中国ではその他に G4 の検出も報告されている。
豚、猪や鹿からは G3 及び G4 の E 型肝炎ウイルス遺伝子の検出例が報告されており、国内でも市販の豚内臓(レバー)のおよそ 2%から E 型肝炎ウイルス遺伝子が検出されたとの報告や、野生の鹿肉を生食した患者の血清と残存した鹿肉から、ほぼ同じ配列を持つ E 型肝炎ウイルス遺伝子が検出されたとの報告があり、G3 と G4 は人獣共通感染症・食品由来感染症としての可能性が示唆されている。
E 型肝炎の予防のため、E 型肝炎の流行地域に渡航する場合は飲用水・非調理あるいは加熱不十分な食べ物には十分注意すること、国内においても猪、鹿などの野生動物の肉や豚肉などは、中まで十分に加熱して喫食することが大切である。
妊婦では致命的になる割合が高く、また免疫抑制にある人は慢性化する場合があり、十分に注意が必要である。

【手足口病】
2019年第26週に県内定点医療機関から報告された手足口病の定点当たり報告数は、定点当たり7.74(人)であった。
県内16保健所管内のうち、14保健所管内で前週より報告が増加した。
報告の多い上位3保健所管内は、船橋市(定点当たり20.09)、海匝(12.75)及び柏市(9.67)となっている。
第26週に報告された患者について、全年齢群合計に占める各年齢群の割合は、1歳(42.0%)、2歳(24.2%)、0歳(12.2%)、3歳(8.7%)等となっている。
手足口病の感染経路は飛沫感染、接触感染、糞口感染であり、また回復後のウイルス排泄や、感染しても無症状のままウイルス排泄している場合もある。
予防策として、手指衛生の励行と排泄物の適切な処理、また水疱内容にはウイルスが含まれているので患者との濃厚接触を避け、タオル・遊具等を別にするといったことなどが挙げられる。



【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和元年7月3日更新)